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コウノメソッド2009 認知症薬物治療マニュアルのご挨拶
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2008 年は、レビー小体型認知症(DLB)、ピック病との闘いが続いた。その中で健康補助食品ANM176、フェルガード100M の著効例を数限りなく経験した結果、両疾患の進行抑
制にはアリセプト少量で代替してきたところをパーキンソニズムや興奮性を誘発するリスクを
考えるとフェルガード100M のほうが第一選択とされるべきではないかとすら考えるように
なった。ただ、自費で購入するものを第一選択とすることで、このメソッドが一般的なもので
なくなる可能性はある。
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今のところ、アルツハイマー型認知症(ATD)で中核症状改善を目的とする場合は、やはり
アリセプトで治療を始めて、(当然1.5mg→2.5mg→5mg の漸増が望ましい)アリセプトが
飲めない患者、アリセプトで興奮してしまう患者は、ANM176 を併用ないし単独投与によっ
て進行の恐れが減ったと断言できる。
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ANM176 の価値は、アリセプトが効かないATD 患者にとどまらず、レビー小体型認知症、
ピック病、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病(DNTC)、正常圧水頭症(NPH)、正常者にも奏効
することが確認できたことである。NPH の場合なんらかの理由で髄液排除ができなくても
ANM176 で歩行が可能になったり、後屈が治りうる。いかなる病型においても車椅子の患者が立ち上がったり歩くということは、結構おきる。その改善率は、サアミオンやシンメトレル
をはるかにしのぐ。
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さらに、嚥下機能回復、血清アルブミン上昇、白髪の黒化、はげ頭からの太い毛髪の産生な
ど「不老長寿」(若返り)のような作用が観察されており、老年医学の研究者にも強いインパクトを
持った宝石のような武器であろう。発売から2 年経過してもまだまだ知らない医師が多いので、
患者家族はもどかしい思いであろう。日本における治験の結果は、Geriatric Medicine に掲載
された。科学的に文句のつけようのない結果(ADAS 改善)だ。
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一般人が手に出来る資料としては、朝日新聞(2009 年10 月27 日付け.夕刊の地域もあ
った)、健康365(いちばん社、2009 年2 月号)、りんくる(中央法規、2009 年1月号)
に記事が掲載された。またある国立病院の医師は、著書(主婦の友社、2008)の中でATD に
フェルラ酸が有効という報告がなされていると記載している。
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アリセプトの10mg 投与が認可されたが治験では25%の副作用がおきている。10mg に
増量して初めて効果を示す患者はほとんどいない。自験では7.5mg に増量した時点で、改善
者は10%、副次作用が30%出た。ATD には、アリセプト5-8mg 程度にANM176 を2~
3包併用するのが一番よいであろう。
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アリセプト0.5-1mg 程度にフェルガード100M を併用していたDLB が、改善したあとア
リセプトをやめてしまってよいか、続けるべきかは個々の患者によって違うので、やめてみて
活力が低下したらアリセプト少量を再開するべきである。それは予期できない。
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なお、New フェルガードはANM176 の後発品であり、ガーデンアンゼリカの産地が違う。
フェルガード100 は、New フェルガードのガーデンアンゼリカを20%に減らしたもの、
フェルガード100M は、フェルガード100 のフェルラ酸の一部活性を長引かせたものである。
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「レビー小体型とアルツハイマー型は、同じ病理学的スペクトラムの上に並んでいる」とい
う仮説(レビー小体は老人斑を封じ込めようとした封入体である)は、レビー患者の病態のバ
リエーションをうまく説明しているように思われた。医師は、目の前にいる患者がレビーなのかアルツハイマーなのかに迷う時間を空虚に過ごすのではなく、対症療法でどんどん患者を楽にさせてゆけばよい。
医師の職業倫理指針〔改訂版〕平成20 年6月(日本医師会)について
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医師が健康補助食品を患者に推奨することについて、ここに法的な背景を説明しておく。
医師の職業倫理指針を抜粋して、コメントを添えたい。
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20 頁 「医師は科学者でなければならない。しかし、医療の進歩は未知の領域に挑戦するなかで得られるものであり、先端的・実験的医療と詐欺的な医療との区別は往々にして難しい。また臨床では、現在の科学の枠組みでは必ずしも説明できないような代替医療などの意義も否定しえない。しかし原則として医師は科学的根拠をもった医療を提供すべきである。
【コメント】ANM176 は、臨床治験に携わった9名の医師および雇用された臨床心理士にとってはすでに科学であり、公の場でも論文が発表された。試験管内の実験、動物実験でも老人斑の形成阻止、動物の記憶向上が証明されており、科学的なものである。また後発品のNewフェルガード、フェルガード100(100M)も科学に足るだけの人数が改善を経験している。
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20 頁 「医薬品・医療器具以外で、食品や日常生活上の用具など、人々の健康の増進や生活の便宜に役立つ物やサービスを推薦することは、健康に関する専門家たる医師の社会的役割の1つであって、広く認められるべきである。」
【コメント】以上より、コウノメソッドは引き続きANM176、フェルガード100M を認知症治療における重要な手段の一つとして推奨し、場合によっては薬剤よりも優先順位が上であることを正直に公開することとする。
略号の説明 (本書で使用する略号)
●ATD、アルツハイマー型認知症 (Alzheimer type dementia)
●VaD、脳血管性認知症 (Vascular dementia)
●DLB、レビー小体型認知症 (Dementia with Lewy bodies)
●P D、パーキンソン病 (Parkinson disease)
●FTD、前頭側頭型認知症 (frontotemporal dementia) 一部がピック病
●NPH、正常圧水頭症 (Normal pressure hydrocephalus)
●DNTC、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病
認知症薬物療法の考え方
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認知症を適応症と認められた薬物は少ない。そこでほんとんどの臨床医は適応外の処方をしている。そこには暗黙の了解がある。法的な規制の厳しい大学病院の医師は、アリセプトの用量調整をせず、適応外の処方をしないので患者をうまく治すことはできないケースが多い。DLBにアリセプトが効くことは誰でも知っている。ただし、用量設定は一般医には難しい。
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非定型向精神病薬(注1)の取り扱い(血糖上昇、生命予後の短縮)には特に注意が必要である。中枢神経系薬剤の使用は、手術と同じくらいのリスクがあるという専門家もいる。最近の医療訴訟はインフォームドコンセントの欠落をつかれることが多い。
とくになじみの薄い患者には要注意である。
(注1)リスパダール、ジプレキサ、ルーラン、セロクエル
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認知症の陽性症状を制御して介護者を楽にさせたり入院を先延ばしにしたりする処方は、臨床医にもっとも求められる技術であり、国の医療経済学にも貢献する。現にセロクエルは認知症の陽性症状に第一選択だという専門家(国立大学名誉教授、内科系)もいる。
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食後血糖が120 程度でも耐糖能異常が潜んでいることがあるので、できれば認知症の初診時に全員HbA1c を行うことが望ましい。
開業医に期待されること
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総合病院、大学病院の中枢神経系専門医は、認知症以外の疾患に追われていて、認知症の治療にモチベーションをもてない場合が多く、外来の待ち時間が長いのも認知症にはマッチしない。また、高度な診断機器を使用しすぎて「早く治療してほしい」という家族の求めとは大きなずれを生じている。これを診断遊びと呼ぶこととする。
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なじみの医師にかかりたいという高齢者の特性から考えて、開業医がプライマリケアの段階で、陽性症状を制御してしまうことが期待される。また、認知症が急増しているため開業医が処方しなければならない時代でもある。
処方する前に
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まず、家族が認知症の処方についてどの程度の知識があるのか確かめる必要がある。つまり「診断だけでいいです」とか「意見書を書いていただければいいです」と言う家族は、処方によって介護が楽になるとか、患者の記憶が改善しうるということを知らないのではないかということである。知っていても前医の処方が合わなくて、薬を不信に思っていることはないか。それを確認する。
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抑制系を処方する場合、薬を手渡す家族が同居しているのか確認する。ヘルパーの訪問時に飲ませてもよい。独居老人で訪問が1日1回なら処方も分1にすべきである。とくに糖尿病薬、降圧薬、抑制系薬剤には注意する。
抑制系薬剤を処方する
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同居者が抑制系の用量調整をできるかどうか、インテリジェンスを確認し、危なっかしいなら安全な用量で処方する
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調整できるなら家庭天秤法で。
わかりやすい説明書(医師の指導の下で)を渡すこと。たとえば、「元気がなくなったら グラマリールを減らす+サアミオンを増やす元気すぎたら セロクエルを増やす+アリセプトを3日中止、以後半分。」 など。
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同居者が混乱しないように、用量調整する薬剤はシンプルにする(多くても2種まで)
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昔開発された薬のほうが、効果が予想しやすいので用量設定もしやすく、結局安全である。
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抑制系薬剤の特徴
1)グラマリール(25mg, 50mg)
在宅生活が可能な程度の陽性症状に。まず25mg 錠で1日1-6 錠の維持量を決める。
2)セロクエル(25mg)
入院しそうな陽性症状。ピック病に。DLB でも少量なら可能。25mg を1 日0.5-6錠。強いので微調整も考える。例えば細粒 朝15mg+夕15mg。睡眠薬2種でも寝られない場合、これを併用するとよい。体の傾斜を起しやすい。
3)抑肝散(ツムラ54)
体幹バランスの悪いDLB、ピック病に。ATD はあまり効かない。1 日1-4 包。1)2)に併用することも。血清カリウム低下に注意とくにラシックス併用時。
4)セレネース(0.75mg)
暴力はなくてもっぱら妄想だけの患者に。歩行のしっかりしたDLB にも少量使用可。
例)抑肝散3 包(分3)+セレネース(0.75)1錠(分2)
5)コントミン(12.5mg)
陽性症状の強いピック病の第一選択。医療保護入院せずにすむ場合が多い。
処方例)mild コントミン(12.5) 1錠(分2)
Moderate コントミン(12.5) 2.5 錠(1-0.5-1)
Maximum コントミン(12.5) 6錠(分3)
ATD においては、グラマリール、セロクエルといった第一選択が効かない患者への第二選択のトップ。
なお、セロクエルを使いたいが糖尿病がある場合は、コントミンが第一選択となる。
6)ルーラン(4mg, 8mg)
体が弱っていて大声を出す患者に。4mg 錠を1 日1-6錠。あまりふらつかないので使いやすい。もちろん効かないことも少なくない。
7)リスパダール(0.5mg, 1mg)
暴力に屯用で。精神科医が好んで処方するが、パーキンソニズムの悪化は必須。暴力的で拒薬するときは1mg か2mg シロップを1 日3回まで。常用は望ましくない。
8)テトラミド(10mg,)
不機嫌、暴力に。10mg 程度を就寝前に2錠。
9)その他 :テグレトール、ジプレキサザイデイス
注意 「奇異反応」20 人に1人の割合で、かえって興奮することがある。
方針 各種抑制系の3-4種併用でも陽性症状がとれず、体幹傾斜や嚥下障害が生じた場合は、処方でのコントロールをあきらめて閉鎖病棟に入院させる。健康補助食品 フェルガード100Mが静穏作用を持つという考え方もできるが、やはり抑制系薬剤で患者の陽性症状を鎮めてから中核症状を改善させようとする手技が基本となる。いかなる抑制系薬剤を試しても用量を増やしても安定しない場合、フェルガード100M が起死回生に患者を安定させることがある。いわば最後の救援投手の候補である。その場合抑制系を全廃できる。
興奮系薬剤を処方する
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アリセプト
● ATD、混合型認知症、DLB、稀にピック病に処方する。
● レセプト上は3mg(14 日)→5mg(28 日)→10mg が求められる。いわゆるアリセプト5mg問題と呼び、全国的に問題化している。5mg と決めずに適宜増減が望ましいが精神科医以外のレセプトでは5mg しか認められない場合がある。
● 私の一般的な増やし方:1.5mg 2.5mg 5mg 7.5mg 10mg
● 私のDLB での増やし方:1mg 1.67mg 2.5mg 5mg 中には0.83mg も
● 下痢:ブスコパン併用 や 分2投与 例)1.67mg(分2)
易怒:グラマリール併用 や 分2投与
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サアミオン
●脳血管性うつ状態、VaD(うつ状態)の第一選択
●アリセプトを増量できないが、元気にさせたいDLB に。
●階段昇降などの筋力をアップさせたいとき
易怒の患者には、サアミオン細粒7mg(分2)やグラマリール少量の併用。
●血管因子による尿失禁を消したいとき
プレタール(50)1日2-3 錠と併用。但し、安静時心拍85 以上、心不全既往、下肢浮腫あり、ならプラビックスを。
(保険適応は脳梗塞である)
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ワイパックス
●認知症ではあるが、うつ病(不定愁訴)合併の疑いが強い場合。0.5mg 錠を1日3-6 錠
食欲のないうつ状態には、パーキンソニズムがなければドグマチール少量を使用してよい。
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ニコリン点滴
●DLB の意識障害に生食100ml にニコリン500mg を入れて30 分点滴。週に1回未満。
NPH に使うことも。 病名:頭部外傷後の意識障害
●DLB などのせん妄、被害妄想から来る拒食、拒薬に500mg を5 日連続程度行うと改善することがある。
●点滴できない患者(体動、血管痛など)にはニコリンH500mg を筋注可能である。(高濃度で2ml なので)
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シンメトレル
●NPH の意識障害や歩行障害に。髄液排除28ml が第一選択だが、処方としてはサアミオンと併用。1日150mg まで。
●DLB には原則として使わない(幻覚悪化)が、シンメトレルが必要な患者も稀に見られる。
●パーキンソニズムに多用されるがあまり効かない。抗パ剤に併用。
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ANM176、フェルガード100M
●健康補助食品であるが、中核症状、陰性症状の改善率は薬以上である。ANM176 は改善者10 人に対して1 人の割合でやや怒りっぽくなるという興奮性が見られる。ANM176 とフェルガード100M は取り扱い会社が異なり、フェルガード100M は興奮性を持つ成分(ガーデンアンゼリカ)がANM176 の1/5 に抑えられている。
●成分は米ぬかに多く含まれるフェルラ酸とガーデンアンゼリカ(西洋トウキ)。フェルラ酸はアミロイドを凝集させない作用があり、ATD の完全進行阻止作用がある。ガーデンアンゼリカは、ニューロンを新生する作用があるのでATD 以外の脳疾患にも有効。会社と組成は次のとおりである。
会 社 商品名 フェルラ酸 ガーデンアンゼリカ (1包あたり)
エイワーシー(埼玉) ANM176 100mg 100mg
グロービア(東京) フェルガード100M 100mg 20mg
効能 7 割のATD 患者の中核、陰性症状を改善する。1日2~3包服用(食直前がよい)。健常人やうつ病、統合失調症が服用しても害はない。DLB、ピック病、FTD(非ピック)、DNTCにもATD 以上に高い確率で有効である。脳障害改善作用以外にも多岐な作用が期待できる。
●①脳内のアミロイドが凝集するのを不安定化すること、②脳脊髄関門を通過すること、③ATD モデルネズミの実験では、正常ネズミよりも記憶が高くなること、④韓国、日本のATD患者で明らかな改善が証明されている。
●アリセプトが最初の1 年で効果が鈍るのに対して、ANM176 は長期飲めば飲むほど神経細胞死が阻止されて、樹状突起連絡によって奇跡的な効果が2年以降にも期待できる。イチョウ葉エキス、DHAなどの健康食品に毎月1万円以上使っている人なら、これらをすべてやめてでも導入したほうが得策。
●改善率は7割程度と思われるが、高く評価できることは①アリセプトに反応しなかった患者にも効く点、②ごく初期や末期でも劇的に変化するケースがあること、③ピック病(FTD)やDLB 患者などにも効果が出ること、である。
胃ろう、寝たきりのATD(54)が座位保持、とんかつ咀嚼まで改善したり、翌日からしゃべりだした場合もある。
●改訂長谷川式スケールが27 点以上で脳萎縮も軽いが、どうも記憶に切れ味がない初老者にはATD 予防用のフェルガード100M を開始してよい。
●陽性症状のためアリセプトを5mg まで引き揚げられないが進行してゆく患者には、はやめにANM176 を併用開始する。
●ANM176 でも興奮する患者、消化器症状が出る者が稀にいるので、その場合は残されたANM176 を半分ずつ(つまり1 日1包)に減らし、次回からフェルガード100M に切り替えるとよい(ガーデンアンゼリカが20%に減らされていて安価)。
●効果は10 カ月をめどに判断する。表面上効果が確認できなくてもATD なら何らかのメリット(神経細胞の死滅抑止)はあるが、支払えない場合は、フェルガード100M に落としてもよかろう。
●逆にANM176 を3包(1.5 倍)やANM176 とフェルガード100M の併用といった強化療法で成功した事例もある。
●何らかの都合で患者が服用できなくなった場合は、家族が服用すればよい。ガーデンアンゼリカがフェルラ酸を増強しているので、玄米を食べたからといってANM176 のような効果はでない。
パーキンソニズムに対して
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PD メネシット、マドパーなどLドーパを使ってよい。
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DLB ペルマックスが一番よい(脱落が少ないから)。L-dopa をどんどん増やしても副作用が出ない患者は、DLB ではなく、ATD とPD の合併と考える。その患者には薬剤過敏性はないのでアリセプトも5mg 程度まで増やしても害はないであろう。しかしさすがに10mg は歩行力保持の面で危険であるため、認知機能障害の進行抑制にフェルガード100M 併用すべきである。
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脳血管性パーキンソニズム サアミオン+プレタールかプラビックス
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薬剤性パーキンソニズム ドグマチールの中止
レビー小体型認知症(DLB)
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アリセプト少量、抑肝散、ペルマックスが三種の神器。しかしパーキンソニズム皆無の患者にあわててペルマックスを処方してはならない。あくまでも対症療法で。認知症にアリセプト、幻視に抑肝散(+アリセプト)、歩行障害にペルマックスを使う。アリセプトの初回量は必ず1mg 以下にすること(ただし、保険適応は3mg 開始となっている)。
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奇跡的改善を起こしやすい用量は、アリセプト1-1.67mg、抑肝散2 包、ペルマックス50-100μg の組み合わせ。これで反応しない患者にはフェルガード100M を導入する。
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意識障害の強いDLB は、ニコリン500mg を生食100ml に入れて30 分程度で点滴。これを月に1-4 回。稀にせん妄(興奮)を起こす患者がいるので注意。本当に元気のない(長い昼寝、診察中の嗜眠)DLB や寝たきり・末期のDLB に施行する。
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アリセプト過剰は歩行障害、ペルマックス過剰は妄想悪化、抑肝散過剰は低K血症をおこす可能性がある。とくにラシックスと抑肝散の併用は、あらかじめアスパラK散700-1500mgの併用することもある。痩せて食欲のない患者、下痢気味の患者は低Kが必発。高度な場合は筋けいれんをおこす。
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食欲低下のDLB には、はやくエンシュアリキッドかラコールで体重を増やすこと。誤嚥しはじめたらANM176 を飲ませ(ヨーグルトにまぜて食べさせる。あるいはCRP が上がる前に胃ろうを造って、ANM176、アリセプト細粒1mg、サアミオン細粒10-15mg、ペルマックス50-150μg(用事粉砕)を投入。反応すれば、寝たきり&胃ろうの患者が歩行、嚥下可能となる(要介護5が3 週間で要介護1-2 に)。かようにDLB は進行が速いが奇跡もおきやすい疾患であり、救命救急の覚悟で治療をあきらめないこと。
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悪夢を見て大声でさけぶDLB は、当面アリセプトは出さず、抑肝散主体でセレネースかセロクエルをかぶせる。このような陽性DLB はたいてい車椅子になっているので転倒の危険はない。ニコリン点滴の適応があるかどうか患者によって異なるので医師の経験が必要である。結果は、著効か悪化かに大きく分かれる。ペルマックスは禁止。落ち着いたらアリセプト細粒0.5mg 開始。
●ATD の陽性症状に抑肝散は効きにくい。やはりグラマリールが第一選択。抑肝散は意識障害系(DLB、せん妄)によい。ピック病にも合う。
●DLB 患者には数多くのバリエーションがあるので、個々に対応する処方のイメージを表にまとめたので参考にしてモデイファイしていただきたい。
通院のDLB に対するバランス天秤法
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わかりやすい説明書(外来のDLB で、家族に調整させる方法)歩行をよくしたいとき ペルマックスを増やす。アリセプトを減らす。幻視を減らしたいとき ペルマックスを減らし、抑肝散を増やす。
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歩行も知能もよくしたい ペルマックスを増やし、サアミオンを併用。
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以上の戦略に加えて、フェルガード100M を導入すれば改善率は相当上昇する。
本態性振戦
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アルマールが第一選択
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アルマールで気持ちがわるい、フワフワする患者には
アルマール(10)1錠(分2)+ 桂枝加述附湯3包
幻視に対して
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DLB アリセプト極低用量 + 抑肝散1-3 包
● 歩行のよいDLB で上記で効果がないとき、セレネース少量の併用可能
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右前頭葉などの脳障害(梗塞、出血、挫傷):セレネース
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精神科医はリスパダールを好むが、もしDLB だったら歩行を遅くする可能性がある。プラ
イマリケア医はセレネースを使いこなして、不応だったらリスパダール少量を試す。
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幻視をフェルガード100M だけで消すことは難しい。
ピック病の陽性症状
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コントミンが第一選択。第二選択は、セロクエル+抑肝散。グラマリールが合うピック病もいる。糖尿病ならコントミン。体が傾斜しているピック病は、DLB でないことを再度確認し、いずれにしても傾斜を起こしやすいセロクエルはやめておくこと。
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前頭葉が萎縮したDLB(フロンタルレビー)をピック病と誤診しないように。暴力的、強い幻視のDLB にセロクエル、セレネースを使うこともあるが、少量である。甘いもの好き、万引きについて再度家族に確認をする(ピック病の決め手)
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前頭葉が萎縮していないのに、前頭葉症状(尿失禁、無言、感覚失語状態、常同など)がある患者は、CT でJobst 撮影をしなおすこと。写真のように撮影装置をOM ラインから前方に20 度傾けて前頭葉眼窩面を観察する(5mm スライス)。ナイフの刃状萎縮か片側海馬の有意な萎縮がないかを確認。あればピック病である
てんかんに対して
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アリセプトを半減させてデパケンR200 1錠(就寝前)。フラフラで抗てんかん薬が飲めない場合は抑肝散。
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DLB は意識消失発作をおこすことがある。その場合は抗てんかん薬を処方してはいけない。抗てんかん薬は抑制系としてDLB のADL を奪う。
血管因子の制御
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プレタール(50)1-4錠。服用によって心拍数が100 を超える人が多いが自覚症状がなければよい。手術2日前に中止すればよい。(パナルジン、アスピリンは7日)。吐き気、浮遊感、浮腫を訴えるケースがある。心不全のリスクがやや高まる。効果としては嚥下性肺炎、尿失禁の消失報告がある。エビデンスを出したいならサアミオンを併用。イチョウ葉エキスの併用は、少し危険(血が止まらない)。
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プラビックス(50)2錠。安静時心拍数が85 以上の患者、心不全既往歴、浮腫がおきやすい患者は、最初からプレタールはあきらめて、肝障害の既往がないことを確認してプラビックスを処方。著者の処方患者割合は、プレタール6対プラビックス4くらいである。
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ワーファリン、アスピリン製剤 循環器に問題があって循環器専門医がこれらを処方している場合は、こちらを優先する。しかし血管因子が認知症にかなり悪影響を及ぼしている場合、一過性脳虚血発作、先回のCT よりPVL が増えた場合は、先方がバイアスピリン1錠(朝)を出していたら、こちらからはプレタール(50)1-2 錠(夕、昼夕)を加える方が望ましい。先方には家族を通して、その根拠を伝える。
中核症状に対して
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アリセプト 前期興奮(下痢、易怒)後期興奮(こだわり、強情、小刻み歩行)の場合、3日wash out して半用量で再開。
ないしグラマリール(25)2 錠併用。
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ANM176、フェルガード100M アリセプトに失望した患者、医師にとっての福音。後続のアルツハイマー薬は不要となったとさえ言える。あるいは患者によっては将来のワクチン以上のものである可能性もあり。(抗原抗体反応を利用したワクチンの場合は全員には効かない)。これら食品で改善したあと、併用していたアリセプトをやめていいかどうかは患者によって異なる。やめてみて悪化するなら再開すること。
医師の皆さんへ
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私の25 年間に渡る認知症治療から得た効率のよい治療法を述べました。介護者にとって一番大事なことは、認知症の進行を遅らせることではなく、患者を落ち着かせることです。アルツハイマーだからアリセプト、脳梗塞だからサアミオン、という処方はやめてください。
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せっかく家族が医師に患者を連れて行っても、薬の副作用(興奮)で他の医師に逃げてゆくということが日常茶飯事でおきています。介護者は疲れていますので、患者よりも介護者を楽にする処方をしてください。
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近隣の専門医は、「アルツハイマー病研究会」で検索できます。私に患者を紹介される場合は紹介状もCTもいりません。予約は必要です。(2009 年7 月2 日より名古屋フォレストクリニック、名古屋市緑区大高町字小黒見山)約1割は専門医でも病型診断できません。診断を正確にすることに固執せずに患者を穏やかにするための処方をすることに集中してください。大学病院や総合病院で脳血流シンチなどの精密検査を依頼しようと思う前に、先生が1日も早く治してあげてください。
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陽性症状を制御する処方をするために、認知症の病型鑑別をする必要はありません。学会に出席しても先生の腕は上がりません。一人でも多くの患者を診てください。患者が教師です。抗うつ薬を処方するなら、相当の覚悟をしてください。なるべく頻回に副作用(元気がない)をチェックしてください。電話でもいいと思います。
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アリセプトのデリケートな処方をする準備のある医師は、コウノメソッド実践医として登録してください。
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ご質問は、「認知症を学ぶ会」の掲示板まで。コウノメソッド実践医やサポーターが総力を挙げて回答しています。